2026.03.04
こんにちは!中島小百合です。英語発音講師、通訳/翻訳、オストメイト認知啓発活動という3つの仕事をしています。子宮内膜症と直腸膣瘻で横行結腸一時的ストーマ10年生です。
そうそう、レディ・ガガ@東京ドームのコンサートに参戦しました。

通路から一番遠い席だとわかり表情の硬いオストメイト(写真左)

入口でもらうリストバンドには発行体がついていて曲に合わせてピカピカ光る(発光体だけ出口で返す)
オストメイト的には相当ハードルの高いドーム/アリーナ公演!念のため思いつく限りの準備と武装で臨み、攻略は大成功❤
規制退場のあと帰宅まで無事故でライブを満喫できました。対面での感動は一生ものです。
さて、いきなり脱線しましたが「こころのふれあいひろば」最終回の第4回では、イギリスのオストメイト事情をご紹介します。
旅行者として行ったイギリスの「やさしさ」は感動的でした。たとえばオストメイト関連で言えば、百貨店の下着売り場(実店舗)にオストメイト用下着がふつうに陳列されている感動!

こちらは1884年創業、英国内外に1,400の実店舗を持つマークス&スペンサー(M&S)という百貨店です。プライベートブランド中心の商品展開で、食料品フロアはイオンと成城石井の中間ぐらい、衣料品はユニクロや無印良品が百貨店と結託してオリジナルの上質普段着ラインナップを展開したような(※個人の感想です)親近感のある百貨店です。
写真は「Stoma Knickers(ストーマ・ニッカー)」という商品。ニッカーはイギリス英語で「女性用ショーツ」(ちなみにゴルフ場や工事現場で目にするニッカポッカも同じニッカーなのですが、こちらはアメリカ英語だそうです)。
私のサイズは売り切れでしたが(涙)、上下お揃い(←これがとても大事)の素材&デザインのオストメイト用下着を百貨店の実店舗で目撃したのは「感動的にうれしい」イベントでした。テンションがおかしくなってレジの人に「あのっ、オストメイトなんですけどっ、Stoma Knickers目立つところにディスプレイしていただいて!ありがとうございますっ!」と通り魔みたいな告白をして引かれました(笑)
さすがイギリス、国の保険でストーマ装具が実質無料で手に入る国~❤
UK(イギリスを含む)全6930万人の人口(2024年イギリス国勢調査より)のうち、335人に1人(Colostomy UKより)の20万人強がオストメイトとのこと。日本よりもオストメイト率が高いからでしょうか、驚きの手厚さです。
これまで私は、多様性を認めあうインクルーシブな社会は「声をあげて勝ち取るもの」と勝手に思っていたようです。たった3年半ですがアメリカに住んだ学生時代の経験のせいかもしれません。人種と価値観のるつぼの中では「私はコレをしたい」「その途中のココで困っている」「それを解決するためあなたの持っている力でソレをこう変えて欲しい」の3点を大きな声で(英語で)言えて初めて、相手がこちらを向いてくれる、という感覚でした。
イギリスで触れたのは、勝ち取る系の武闘派インクルーシブ(笑)とは異なるものでした。オストメイトに限らず、生きづらさを抱えた人の存在を認めたうえで「さまざまな人がいるというのを分かっているし、その人にとって生きやすい社会を目指したいと思っている」というメッセージも発信する。多様性を認めあったことを、言葉や態度で示してくれるインクルーシブな姿勢でした。

たとえば地下鉄の優先席に「Not all disabilities are visible」(見た目には分からない障害もあります)と表示することで、私たちのような内部障害者が座っても怒られたり睨まれたりしにくい配慮がされていたり。


友人のお母さんのマンションのロビーで、関節炎(リウマチなど)の情報誌を見つけたり。


街のあちこちに「Cancer Research UK(世界最大の独立系がん研究チャリティ団体)」のチャリティショップがあり、寄付された古着やがん啓発グッズの売上がイギリスのがん研究機関に寄付される仕組みになっていたり。
イギリスではチャリティ団体への少額寄付も日常的におこなわれているようです。みんな自分の「推し」(応援したい)チャリティ団体を見つけては、社会貢献の一環として10ポンド(約2,000円)単位から寄付しています。
イギリスのオストメイト支援団体 Colostomy UKでは、Active Ostomates -At Home(アクティブ・オストメイト・アット・ホーム)というキャンペーンが定期的に開催されています。無料で登録すると「ヨガ」「チェアヨガ(椅子に座ったまま行うヨガ)」「ピラティス」「マインドフルネス&瞑想」のオンラインクラスを2か月間!毎週受けられるというものです。2月末から新しいクールが始まるところで、私は今回が3クール目の参加になります。
この「無料で登録すると」のところが大変うまくできていて、申込ボタンのとなりに「5ポンド寄付する」「10ポンド寄付する」という、細かく価格設定されたボタンが配置されているのです…!「寄付はオプションです」と書かれているものの、プロのインストラクターのレッスンを2ヶ月毎週受けられるのなら!とスムーズに寄付したくなる仕組みです。
現在も貴族階級の存在する国イギリスには、ノブレス・オブリージュ(高い地位には義務が伴う、というフランス語。富裕層、有名人、権力者、高学歴者が社会の規範となるようにふるまうべき、という社会的責任・努力義務)の感覚が広く浸透しているのですかね。障害者の視点で旅をしていると、本当にさまざまな気づきがあります。
そんなイギリス Colostomy UK の情報誌「Tidings(タイディング)」第81号にて、わたくし表紙を飾らせていただいちゃいました❤

編集の方がSting(元 The Policeのボーカル。もちろんイギリス人)の名曲「Englishman in New York」のサビを文字って掲げてくれたタイトルが粋すぎて鼻血が出ました。こういうお洒落さも英国ならではという感じです。
英語というとインバウンド(海外からのお客さんや文化を日本に迎え入れる)と思われがちですが、じつは英語屋としての私の本業はアウトバウンド(日本の文化や才能を英語で世界に発信する)なんです。なんの因果かオストメイトになったので、自分を実験台にアウトバウンドを楽しみ尽くすことにしました。
気の合う人が欲しいなら、世界で探せばいいじゃない(笑) ということで、今後とも国内外のオストメイトとのつながりを大事に!ニヤニヤしながらQOLを爆上げしていきたいと思います。
4回にわたりコラムをお読みくださった皆さま、ありがとうございました。編集の押味さん、毎回のわがままリクエストを想像以上の解像度で叶えてくださり、本当に感謝しています。最初に声をかけてくださった加瀬さん、そして河合さん。私を信じて大事なサイトのページを預けてくださり、ありがとうございました!
こちらは引き続き気の合う仲間を見つけては、楽しい企みを続けていきたいと思います。おそらく今後もずっとオストメイトでしょうから(笑)
交流会や講演などでお目にかかる機会もあるかもしれません。そのときには是非「ザイタックのアレ、読んでました!」と声をかけてくださいね。
それでは皆さん、お身体に気を付けて!
相棒のストーマさんと仲良くお過ごしください~
中島小百合
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英語発音講師、音楽通訳・翻訳
オストメイト当事者
学習院大学文学部哲学科(東洋思想史専攻)卒業。
英語力ゼロで渡米。3年半でTOEIC満点、英検1級合格の英語力を習得。
米国バークリー音楽大学
Berklee College of Music
パフォーマンス(歌)学部卒業。
23歳から英語学習を始めネイティブ発音を習得。
音大で学んだ経験を活かした独自の発音指導方法を開発。
企業研修、個人指導などで英語発音の指導をおこなう。
通訳・翻訳業では、音大教科書の翻訳、音大教授のマスタークラス通訳、楽譜出版社の講義通訳、Zoomレッスンの同時字幕通訳、雑誌のインタビュー通訳などを担当。
結婚直後に腸管子宮内膜症で一時ストーマを造設。そのまま現在に至る。
「しあわせなオストメイトから明るくやさしい社会をつくる」を目標に全国で啓発活動を行う。