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志ある医療者のがんばりと責務

2022.08.22

かつて、今もなお尊敬している先輩ETナース(ストーマ保有者を専門的にケアする看護師)のストーマ外来を見学させていただいた時、人間味に溢れた温かなセルフケア指導を拝見しました。その際、看護におけるプロフェッショナルの真の役割が理解できました。

先輩のETナースは、凜とした態度ながらも、オストメイトへ温かみあるわかりやすい説明と、社会復帰に向けた適切なセルフケア指導をされていました。また、後輩ETナースらの相談にも惜しみなく応じてくださり、まさにプロフェッショナルな看護師の役割モデルでした。

特に可視化できるような科学的根拠あるケア実績を提供することの大切さと、結果を出すことで患者さんからはもちろん、医師や看護師、他職種の人たちにも信頼されるということを学んだのでした。専門的なケア技術と研究心、変化に適応する能力、自らを律して学び続け、同じ志のある後輩たちにも繋げて行く責任感と未来志向などを感じ取ることができ、大いに影響を受けました。その方の凜とした志高い姿勢と優しい笑顔がずっと私の脳裏に残っております。

私の当初の目的は、「ストーマ造設患者らの社会復帰の質を低下させないために看護師として適切な支援ができるようになる」でしたが、いつの間にか「看護師として自らの質を上げ、地域でのストーマケアの日々の生活基盤を支えるようなシステム作りを同志らと目指す」に変わったかと思います。

先輩ETナースや聖路加で研修を終えたETナースらの奮闘が認められ、1996年からWOC(創傷ケア、ストーマケア、失禁ケア)看護認定看護師制度に向けた教育が日本看護協会により開始されました。ほとんどのETナースが試験を受けてWOC看護認定看護師(以下、WOCN)へと移行しました。数年後には皮膚排泄ケア認定看護師と名称変更があり、近年では約2600人が活躍されています。

今ではさらに特定看護師へ移行するWOCNも増えており、ストーマケア創成期には考えられないほど、専門的知識、技術、技能を習得した看護師が増えたことで、オストメイトにとっても幸せな時代になったといえるかもしれません。

後輩の看護師の皆さんには、先輩ナースらが現在に繋げた物語を記憶にとどめていただき、新たな歴史を繋いで行って欲しいと願うばかりです。

私がかつて働いた病院でも、後輩のWOCNや特定看護師らが誕生し、専門外来やチーム医療が後輩らにより継続していることを大変有り難く思います。

今後は、現在活動中のWOCNや特定看護師らが、より看護の専門性を高めながら、看護独自の視点で新たなパイオニアとなる時代を築くのだろうと期待しながらも、コロナ禍の時代の流れに奔走され、本来の役割ができないのではなかろうかと案じずにはいられません。

私もET/WOCNをとうに引退した身ではありますが、オストメイトの皆さんの生活の質が低下することなく術前と同等、またはそれ以上の質を保て、どなたもとりこぼされることのない支援体制がさらに整うことを願っております。

今ではオストメイト専用の多機能型の公衆トイレが普通にあります。まだまだ改善の余地があるのでは?と思いながらも、志ある医療者らのがんばりと国内患者会の大きな役割、ストーマ関連企業の努力と協力など鑑みて、とても感慨深いです。

ストーマをやむなく造設する疾患が存在する限りは、オストメイトへの支援は続くため、より謙虚に看護の専門性を高めて勇気を持った研究も続けていただきたいと願っております。在宅看護でもWOCNは心強い存在で、ストーマケアが難儀でなくなり、オストメイトや家族にも苦労が少ない時代になってきたのではと、実際に身内の介護を通じて心に強く感じたものでした。

創成期から先輩ETナースたちをはじめ、志高い医師や看護師などの医療関係者や、ストーマ関連の装具開発やオストメイト支援に関わる方々が、それぞれの役割において「ストーマリハビリテーション向上」という共通目的のために奮闘されたことを想起しながら、現役をとうに引退した身ながら、昔に思いを馳せ、言いたい放題書かせていただきました。

後輩の看護師の皆さんには、先輩ナースらがパイオニア的役割を担って活動し現在に繋げた変遷の物語を少しでも記憶にとどめていただき、新たな歴史を皆さんで繋いで行って欲しいと願うばかりです。

時代錯誤もあるような拙い文でしたが、皆さんの幸せを祈願して、エッセイ風コラムを今回にて終わらせていただきます。

PROFILE
山名敏子 さん

看護師、リンパケアリスト

<略歴>
聖路加国際病院ETスクール修了(1989年)
日本看護協会皮膚排泄ケア看護認定看護師資格取得(1998年~2013年)
一般社団法人リンパケアリスト協会顧問
NPO法人E-BeC(乳がん患者支援団体)名誉理事
埼玉県知事看護功労章受賞(2017年)